パールと聞いてまず思い浮かぶのが、白くてつやのある真ん丸な形、シンプルな連のネックレス。
ですが、アンティークジュエリーを手に取りながら歴史を紐解いていくと、バリエーションに富んだ形や希少なパールを用いて作られた、時代ごとの洋服のスタイルにあったデザインやアイテムの多さに驚かされます。
ルネサンス期には、形のユニークさを活かして動物や想像上の生き物などをモチーフのオーナメントやペンダントが作られました。
その約200年後にはルネサンスリヴァイバルジュエリーとして、ペンダントやブローチなどに見られますが、そこに女性らしい軟らかさはあまり感じられず、どちらかというと男性向けのジュエリーでした。
1800年代に入り、ナポレオンが皇帝になると権威を世に示すために重厚感のあるジュエリーが作られるようになります。
宮廷ファッションでは皇妃ジョセフィーヌに見られるように、バンドーやティアラ、ネックレスがガウンの広く空いた胸元に着けられました。
1820年代になるとウェストラインが下がり、スカートが大きく膨らんだドレススタイルには装飾性のあるボリュームジュエリーが流行しました。
同時に世の中は、中世やルネサンス時代への憧れからロマン主義の風潮が盛り上がってきます。
37年に始まるイギリスのヴィクトリア時代には、女性らしいパールジュエリーの数々が登場しました。
非常に小さいシードパールに糸を通し、カットした母貝の白蝶外の台の上に組み上げて花などをかたどったジュエリーは繊細ながらもボリュームがあります。
シードパールは、パリュールと呼ばれるセットによく見られ、婚礼などの席でつけられるものとして、清楚な女性のイメージにぴったりでした。
また一方で、パールは涙の象徴とされたのか、色のない宝石として許容されたのか、モーニング(喪)ジュエリーとしても多く用いられました。
故人を偲んで髪の毛を入れたリングやブローチはパールで飾られ、骨壺や聖霊を示すハトなどを微細なシードパールで描いたものもみられます。
1890年代になると、戦争によって南アフリカからの供給が困難になったダイヤモンドに代わって、ハーフパールや半貴石を用いたジュエリーが好まれるようになります。
モチーフは前のハートや勿忘草、弓矢などのメッセージ性の強いセンチメンタルなものが主流でした。
1900年代初期のエドワード時代では、ダイヤモンド、プラチナとともに白いジュエリーとしてパールはデザインの主流となりました。
タッセルと呼ばれる房飾りのついたソートワール、ドッグカラーネックレスは英国のアレクサンドラ王妃が身につっけて流行のきっかけを作りました。
アーツアンドクラフツ運動の時代からアール・ヌーヴォーにかけてはブリスターパールと呼ばれる殻付き真珠やバロック真珠を使った、実用というよりは芸術性に重きを置いた作品が目立ちます。
1920年頃には天然真珠で作られた上品な色味のグラデーションのパールネックレスが広く世に出回りました。
アール・デコの時代には服装がよりシンプルに、直線的なシルエットへと変化していきます。
ジョルジュ・バルビエの版画などでは女性が驚くほどロングのパールネックレスを自在に扱っている様子が描かれています。
近年では明確な流行名はないようですが、パールネックレスはチョーカー、プリンセス、マチネー、オペラ、ロング、ロープというように長さによって名がつけられ、自由に自分のスタイルやその時の洋服のデザインに合わせて楽しむことが出来ます